徳島大学?高知大学?香川大学との共同開催で
(SPOD開放プログラム)「授業について考えるランチセミナー」<通信制大学の学びから対面授業の意義を考える>が開催されました。
ご参加いただいた皆さま、大変ありがとうございました。
■開催日時
第1回 2025年9月11日(木)12:05~12:50
第2回 2025年9月18日(木)12:05~12:50
■参加者
第1回 9月11日
49名(Zoomによるオンライン)
第2回 9月18日
49名(Zoomによるオンライン)
■コーディネーター?講師?登壇者
コーディネーター:寺田 悠希 (高知大学学び創造センター)
第1回 9月11日
講師: 寺田 悠希(高知大学学び創造センター)
第2回 9月18日
講師: 寺田 悠希(高知大学学び創造センター)
■内容
第1回
第1回では通信制大学について、その法的根拠や歴史、通信制大学における授業の種類や授業の進め方、さらには通信制大学の学生数や学生層の特徴について講師から説明が行われた。
まず通信制大学は学校教育法に法的な根拠をもち、大学通信教育設置基準においてその詳細が定められている。通信制大学は、現在はインターネットによる講義動画の配信が中心ではあるものの、そのあり方はメディアの発展とともに大きく変化してきた。最初期は紙媒体のテキストを送付する形から、次第にラジオ放送、テレビ放送が加わり、インターネットによる動画配信が可能になったことやeラーニングによる学習環境の整備によりオンラインだけで学習を完結できるようになった。さらにコロナ禍を経て一般の通学制大学もオンライン授業を導入し出したことから、現在では通学制大学と通信制大学の境界があいまいになっていることが講師から指摘された。
通信制大学における授業には、印刷教材等による授業、放送授業、面接授業、メディアを利用して行う授業があり、いずれも添削が行われたり、教員?学生間の双方向性が担保されたりしている。現在ではインターネットによる双方向的なメディアを利用した授業を対面授業に置き換えることも可能であり、講師からは卒業に必要な単位全てをオンラインで取得できる通信制大学もあるという説明があった。通信制大学における主な授業の進め方は以下の通りである。学習者がテキスト?動画等の教材を用いて自主学習し、その成果をレポート等の形で提出する。その成果物に添削が行われ、結果をもとに単位認定試験の受験可否が決定される。受験を許可された場合は、所定の場所や方法等で試験を受け、基準を満たせば単位が認定されるという仕組みである。
通信制大学に通う学生の特徴として、18歳~22歳の一般的に大学に通う層以外にも幅広い年齢層にまたがっていることが指摘された。また、すでに大学を卒業してから入学している学生も多く、学位を取るという目的だけでなく、職業に活かせる知識や資格の取得も入学動機となっていること、時間や場所を問わず学べることが理由として挙げられた。さらにセミナーの中では、現在の通信制大学の動向における特筆すべき点として、通信制大学が近年多く新設されていることが示された。この理由としては、上述のようにインターネットによる学習環境の充実やコロナ禍による通学制と通信制の境界があいまいになったことであることが講師から示唆された。
第2回
最初に、講師から前回寄せられた質問への回答、ならびに前回の内容に関する振り返りが行われた。その後、今回は放送大学に焦点をあて、開講科目の種類や授業方法?学習方法、教材作成の実態、加えて学生に関するデータについて紹介がなされた。
放送大学は放送大学学園法にもとづき1983年に設立され、テキストに加えてメディアの変化に合わせてCS放送、BSデジタル放送、インターネット配信等多様なメディアと各地の学習センターにおける対面授業や情報提供を通じて教育を行っている。放送大学は教養学部のみの単科大学であるが、その下に「生活と福祉」「心理と教育」「社会と産業」「人間と文化」「自然と環境」「情報」の6つのコースを有している。この際に、人文?社会科学の授業や情報系の授業は比較的多いものの、演習等を必要とする自然科学系の授業は放送大学のみならず通信制大学全体において少数となる傾向があることが講師より説明がなされた。
放送大学での授業はテレビやラジオといった形で収録されており、シラバス作成からテキストの執筆、動画収録まで3年間、その後動画は4年から6年教材として使用され、延長された場合は最長10年間使用される可能性がある。そのため、授業内容の鮮度が課題となりうることが指摘された。また動画収録の際は実際の放送番組と同様プロデューサー?ディレクターが存在し、この中でも収録の実働を担うディレクターが映像や提示する資料の工夫等を通じて授業を伝わりやすいものにする「インストラクショナルデザイナー」の役割を果たしていることが挙げられた。また、オンライン授業は、学生がLMS上で学習を行い、指導を受けたり他の受講生との交流を行ったりできるようになっている。なお放送授業については、単位認定試験を会場ではなくオンラインで受講できるようにもなっている。
放送大学における学生は20代から70代まで幅広いが、他の通信制大学に比べ比較的年齢層が高いという特徴がある。また入学10年以内の卒業率は25%となっているが、これは学生の学習動機が必ずしも学位を取得するだけでなく、現在の仕事に必要な知識?資格を得るほか、余暇や生活の充実といった生涯学習として学習する目的で在籍する学生も多いことが要因として挙げられた。最後に文部科学省のnba直播吧元年度における「全国学生調査」と放送大学で実施された学生実態調査の結果の比較や在学生の語りを挙げ、放送大学をはじめとする通信制大学のメリットとデメリットとして考えられる点が提示された。
■成果と課題
参加者アンケートを行った結果、「5. 本セミナーは今後の教育活動において有益なものであった」という設問において、第1回、第2回ともに全ての回答者から肯定的な回答 (「とても当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」の合計) を得ることができた。また、他の設問においてもおおむね肯定的な回答が得られた。
第1回(9月11日) | 第2回(9月18日) | |
---|---|---|
とても当てはまる |
3 (27.3%) |
6 (46.2%) |
どちらかといえば当てはまる | 7 (63.6%) | 6 (46.2%) |
どちらかといえば当てはまらない | 1(9.1%) | 1 (7.7%) |
まったく当てはまらない | 0 (0%) | 0 (0%) |
合 計 |
11 (100%) |
13 (100%) |
※その他のアンケート項目の結果はグラフを参照。
自由記述においては、第1回では通信制大学の制度や仕組みについて知ることができたというコメントが目立った。また第2回では、通信制大学、とくに放送大学の授業がどのように作られているかを知ることができたほか、対面授業と比較して双方の利点について考えることができたと言った意見も寄せられた。しかし、もっと対面授業との比較を積極的に行って欲しかったという意見も見られたほか、回答者には今回のセミナーの内容を自身の授業実践とどのように結びつけるかについて明確なイメージができなかったことを示唆させる記述もあった。
今回のセミナーの内容は初めて扱ったテーマであり、かつ直接授業実践に対するヒントを提供するというよりは、大多数の教職員にとってはなじみのない「通信制大学」について知るということに重点が置かれていた。そのため、参加者にはとまどいを生じさせた面もあったかと思われる。しかしながら、このような「通常では知る機会のない内容について知ることができる」セミナーは、これまでになかった新しい試みとして意義があったと考えられる。気軽に聞くことができるランチセミナーの利点を生かす意味でも、このようなテーマを扱うことについても今後積極的に検討していきたい。
■アンケート回答結果
第1回 (n=11)
第2回 (n=13)
■セミナーの模様(アーカイブ動画より抜粋)
ご不明な点などございましたら、下記アドレスもしくは、電話でお問合せください。
教育支援課教育企画係 メール:kykikakuk@tokushima-u.ac.jp
電 話:088-656-7686 内線(82)7125
徳島大学全学FD推進事業も紹介していますのでぜひご覧ください!
http://www.tokushima-u.ac.jp/highedu/reform/