地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)に採択 ~モンゴルにおけるD型肝炎ウイルス感染の制圧を目指して~

トップnba直播吧らせ地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)に採択 ~モンゴルにおけるD型肝炎ウイルス感染の制圧を目指して~

大学院医歯薬学研究部微生物病原学分野 研究教授 駒 貴明 


 nba直播吧7年4月に、私(微生物病原学分野?駒貴明)が代表を務める研究課題が、「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS(サトレップス))」に採択されました。SATREPSは、感染症、環境?エネルギー、生物資源、防災の4分野において、日本と途上国が連携して地球規模の課題解決を目指す国際協力型の研究支援事業です。本事業は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)と、独立行政法人国際協力機構(JICA)によって共同実施され、nba直播吧7年度からnba直播吧12年度までの6年間にわたり、最大約5億円の支援を受けて実施されます。
 今回採択された研究課題は、世界的に注目が高まりつつある感染症である「D型肝炎ウイルス(HDV)感染症」の制圧を目指す、モンゴルとの国際共同研究です。HDVは、B型肝炎ウイルス(HBV)の助けを借りて感染?増殖する特殊なウイルスで、HBV感染者に重複感染します。HDV単独では感染性の子孫ウイルスを作ることができないにもかかわらず、慢性肝炎の中でも最も重篤な病態を引き起こし、肝硬変や肝がんの発症リスクを大きく高めることが知られています。
 D型肝炎は、これまで効果的な治療薬が存在せず、また感染率も低いと見積もられていたことから、あまり注目されてこなかった「顧みられない疾患(Neglected Disease)」とされてきました。しかし、近年のメタ解析により、世界で約4,800万?6,000万人が感染している可能性が指摘されました。さらに、D型肝炎ウイルスに対する抗ウイルス薬Bulevirtideが欧州で承認されたことにより、国際的な関心も高まりつつあります。ただし、Bulevirtideは長期的な有効性や安全性が未確立で、投与方法や費用の面でも課題が多く、低?中所得国での普及は困難です。このため、より効果的かつ実用的な新規治療薬の開発が強く望まれています。
 世界的に見ると、HDV重複感染率には地域差があり、なかでもモンゴルはHBV感染者の60%以上がHDV にも感染しており、これは世界最高水準です。HDV対策はモンゴルにおける公衆衛生上の緊急課題とされており、検査体制や専門人材の不足が深刻です。こうした状況の中で、徳島大学の学術交流協定校であるモンゴル国立医科大学を中心に、モンゴル側の医療?研究機関と連携し、同国において深刻な公衆衛生課題となっているHDV 感染の制圧を目指します。
 本研究には、日本側からは、私に加えて徳島大学の分子ウイルス学が専門の野間口雅子教授、肝臓病理学が専門の常山幸一教授、そして国立感染症研究所の感染症創薬が専門の渡士幸一部長が参画しています。
 研究ではまず、安価かつ簡便で、持続的に利用可能なHDV抗体検出法(ELISAとイムノクロマト)を開発し、その技術をモンゴルの研究者に提供します。次に、現地研究者がこの検査法を用いて、数千人規模の大規模な疫学調査を実施し、HDV感染の実態、HBVワクチンの有効性、モンゴルにおける主要な感染経路などを明らかにします。また、HDV感染がどのように肝臓の病態を悪化させ、肝がんへと進行するのかについて、病理学的手法を取り入れ、肝組織を分子レベルで解析することで、将来の治療法開発にも貢献します。
 さらに、本研究では人材育成も大きな柱の一つです。現地訪問トレーニングや、日本国内での研修を通じて、モンゴルの研究者や医療従事者がウイルス学?病理学の診断技術を習得できるよう支援します。また、博士課程への留学生受け入れも行い、将来的に現地で感染症研究を牽引する若手人材の育成を目指しています。
 本プロジェクトを通じて、徳島大学発の研究が国際社会に貢献するとともに、HDV 感染症への理解と啓発を国内でも広げてまいります。
 医学部の学生さん、世界を舞台にしたウイルス研究に、ぜひ一緒に取り組んでみませんか?


R7satreps1.jpg  R7satreps2.jpg

カテゴリー

閲覧履歴